2025年6月15日 日曜日
産後の仙腸関節炎・仙腸関節痛
産後、仙腸関節の痛みでお悩みの方へ
このページは産後、骨盤の後方に痛みや違和感があり病院で診てもらうと「骨盤ベルトを巻いて様子を見るように」と言われて過ごしていたけど、中々痛みが引かず、場合によっては徐々に酷くなってきて不安になられているかもしれません。
でも、安心してください。
産後に起こった仙腸関節の問題はほとんどのケースで改善します。
仙腸関節は非常に繊細で複雑な関節ですので 状況によっては長期間かかることもありますが、それでも最終的にはほとんどの方が良くなっています。
以下で産後の仙腸関節の痛みについて解説しています。
Contents
仙腸関節について

仙腸関節は骨盤の後面に左右ある関節です。
骨盤の骨、腸骨と仙骨による関節です。
仙腸関節は動くのか?
仙腸関節は「関節」という名前がついていますが、肘や膝のように大きな動きはしません。今でも仙腸関節は動くという説と動かないという説で論争が起こっているほどですが、 私たちは20年以上毎日の施術でほとんどの方の仙腸関節を触ってきた経験、実際の解剖に参加し見てきた経験、様々な文献、意見などから仙腸関節は「動く関節である」と位置付けています。
ご高齢の方は動きにくくなってきます。
妊娠中・産後の仙腸関節は動きやすい?
妊娠中や産後はホルモンの影響や分娩での負荷、体内水分量の関係で仙腸関節は通常時よりも動きやすくなります。実際の臨床の現場でも非妊娠時と比べ仙腸関節の動きが大きくなる事が確認できるケースがほとんどです。
※あくまでも私たちの経験に基づく見解です
※個人差があります
仙腸関節の痛みについて
仙腸関節の痛みは大きく分けて2つのパターンがあると考えています。1:関節機能障害≒固まっている
本来動いているはずの関節が何かしらの要因で正常な動きを失っているパターンです。 主に関節周辺の結合組織が固まった状態です。動きがないので関節の代謝も起こりにくく滑液(関節の動きを滑らかにする液体)の分泌も起こりにくくなっている可能性があります。2:関節が動きすぎているパターン
関節周辺の組織が緩んだり水分量が増えることにより関節が動きすぎているパターンです。妊娠中や産後は特にこのパターンが多い傾向にあると私たちは判断しています。
どちらのパターンにも仙腸関節炎と呼ばれる炎症が起きているケースも考えられます。 片方だけの動きなら問題ないが左右差があることが痛みの発生につながるという考え方もあります。
仙腸関節炎・仙腸関節痛の症状
痛む場所
基本的に痛む部分は仙腸関節部(骨盤の後方)ですが、場合によっては放散痛が股関節、下肢に感じることもあります。痛みの種類
鈍い痛みズキンと一瞬痛む
ズキズキする
だる重い
と痛み方は様々です。
痛むタイミング
寝返り 椅子からの立ち上がり長時間座っていると痛んでくる
横向きで寝ていると痛む
階段で痛む
抱っこやものを持ち上げる瞬間に痛む
仙腸関節の検査
X線やMRIの課題
仙腸関節の問題は実はX線やMRIでは判断が難しいのが現状です。 そもそもが大きな動きのない関節ですので大きなズレなどは起こりにくく画像ではわかりにく部分でもあります。ただ仙腸関節付近に症状があっても腰椎や腰部椎間板、股関節などが原因であることもあるのでその辺りの鑑別には有効と言えます。
徒手検査
ストレステスト:仙腸関節にストレスを加え痛みの有無を確認しますニュートンテスト:腹臥位で仙骨を下方に圧迫し痛みの有無を確認します
ガエンズレンテスト:股関節を屈曲し仙腸関節に負担をかけ疼痛の有無を確認します
パトリックテスト:股関節を外転外旋させ仙腸関節に負荷をかけ疼痛の有無を確認します
触診
徒手検査も正確に仙腸関節だけの問題かを判断するのが難しい部分があります。周辺の関節や筋肉などの問題も同じような反応が出ることがあります。そこで、重要になってくるのが触診です。
スタティックパルペーションと言われるカイロプラクティックで用いられる検査法で仙腸関節の状態を確認します。 静止状態で左右の動きの差、他の関節との硬さの差、歪みの状態などを判断します。
デメリットとしては判断に経験やセンスなどの差が出てしまうところです。
仙腸関節は鑑別が難しい
これらを総合的に判断する必要があります。炎症が起きているかいないかも、ブロック注射を打ってみて痛みが引けば炎症あり、引かなければ炎症なしなどと判断されるようです。 それぐらい、仙腸関節の鑑別は難しく繊細なものです。
つまり、症状から判断されるということです。
仙腸関節の問題と判断され何件も治療や施術を受けたが、実際は関節そのものではなく大臀筋という筋肉の問題であるというケースもよく目にします。
この鑑別の難しさが仙腸関節障害の治りが悪いと言われる要因の一つだと私は考えています。
仙腸関節の治療
仙腸関節の治療は固まって問題が起こっている場合と緩んで問題が起こっている場合では全く異なります。固まっている問題を取り除くのは実はそれ程難しくありませんが、緩んでいる問題を解決するのは単純にはいきません。
妊娠中や産後の仙腸関節の問題は「緩みによるパターン」がほとんどなのです。
固まってしまっている仙腸関節に対しての施術
固まっている仙腸関節のマニュピレーション(動きを出す施術)を行います。 周辺の筋肉や結合組織に対しての施術も必要に応じて行います。 場合によってはスラストと呼ばれるテクニックが有効なこともあります。 その他、体重のかかり方など仙腸関節を固める要因になったものを取り除くための施術を行います。緩んでいる仙腸関節に対しての施術
緩んでしまっている仙腸関節に対してスラストやドロップベッド、ストレッチなどの施術は不適合と考えます。逆に悪化してしまうことも十分に考えられます。
緩んでいる場合は股関節や腰椎などの周辺の関節の問題を取り除き仙腸関節に余計な動きが起こらないような調整が必要です。
また、緩んでいる仙腸関節は非常に歪みが起こりやすいため上半身の重心のズレや日常での姿勢なども影響が大きいと考えられます。
重心や歪みの調整、体の使い方を変えるなどの取り組みも必要になります。
最後に
仙腸関節の問題、特に産後に多い緩み過ぎによる問題は長期化する傾向にあります。緩んだものを安定させるのがタダでも難しいのに産後は抱っこなどの無理な姿勢をとるシーンが増えるためより仙腸関節に負担がかかるからです。
安定させるためにベルトを巻いておけばいいか?というとそんな単純な事でもありません。
正しいポジションに戻し
周辺筋肉が正常に働けるように促し
仙腸関節が余計に動かなければいけない状態を解除し
できるだけ負担をかけない日常動作を習得
これらを正しい順番で正しく実施してやっと痛みが解消していきます。
大変かもしれません。
しかし、仙腸関節の問題は放っておくと将来影響が出る確率が高い症状の一つです。 そして、私の経験からのお話ですが 完璧な自然治癒は期待できません。
キッチリとやることをやっていけば必ずと言っていいほど解消します。
私たちが全力でお手伝いします。
組織の状態が悪くなってしまう前にお早めにご相談ください。
関連記事タグ : 腰